2017/06/25

「日本トップリーグ連携機構」のGM(ゼネラルマネージャー)研修会に登壇させて頂きました!! ~その1~

スポーツマネジメント人財

前回のコラムで取り上げた京都新聞「多士済々」の記事。そこで使われた写真は「日本トップリーグ連携機構」のGM研修での一コマです。記事を読んでくださった方から、どんな研修ですか?とご質問を受けましたので、簡単ですが、レポートをさせて頂きたいと思います。

「一般社団法人 日本トップリーグ連携機構(以下、JTL)」は、2005年に、日本における「団体ボール競技」8競技9リーグのトップリーグが連携し、互いの競技やリーグの強化活動とその運営の活性化を図ることを目的に設立されました。2017年4月1日現在で、10競技12リーグが加盟、2015年からは川淵三郎氏が、会長を務められています。

2016年のリオ五輪では、オリンピック競技で日本は史上最多の41個のメダルを獲得しました。しかしながら、「団体ボール競技」のメダルへの距離はまだまだ世界の壁が高く立ちはだかっているのが現状です。さらには、オリンピックを目指す代表強化のみならず、各競技の国際競技力強化や活性化、地域との連携強化、ひいてはアスリートを志す子供たちの未来のためにも、「各競技団体の横断的な連携・協力」が必要であると、川淵さんは折に触れておっしゃっています。この「GM(ゼネラルマネージャー)研修」もそれらの一環として、特に、チームやクラブの「マネジメント機能の強化」を主たる目的とし、時代に即したチーム運営、リーグ運営に取り組める人財育成のために、回を重ねてこられました。

今回、この研修のコーディネートを担当された、スポーツマネジメント人材育成では一日の長の実績を持つ「SHC(Sports Human Capital」の「中村聡」さんから、最初にご相談を受けたのは、他のプロジェクトでご一緒していた昨年末でした。中村さんは、そのご経験値からでしょう、これまでのGM研修からより進化させ、一方通行で受け身な研修でなく「アクション・ラーニング」的な要素を取り入れ、より実践的で使えるスキル、獲得できるスキルを明確にしたいという強い思いをお持ちでした。そして講師依頼を受けた時、ちょうど私自身が「Bリーグ」の様々なクラブ経営者やGMの方々と接することも増え、スキルや意識の違い、さらには、学ぶ機会の必要性などを痛感していたこともあり、他のトップリーグのクラブの状況を知り、情報やノウハウをシェアできることも多々あるのではないかと思い、チャレンジングながらお引き受けすることにしました。

その後、SHCの方々、JTLの事務局長とも何度も打合せを持ち、「カリキュラムの設計」すなわち、本GM研修の期待値、前提、ゴールイメージ、そして内容と進行、運営を検討していきました。

最も難しかったのは、一つは、日本のトップリーグのそれぞれの競技やクラブにおいて、GM(ゼネラルマネージャー)の位置づけや役割が大きく異なるということ。(そもそも、日本では、GMたる地位やロールがまだまだ確立していないとも言えます。)そして、もう一つは、個々の競技やリーグだけでなく、クラブによっても、環境や状況が著しく異なるということ。
役割や環境が異なるということは、当然ながら、彼らの抱えている課題も違えば、持っているスキルも異なり、おのずと研修に対する期待値も異なるということになります。

「カリキュラムの設計」をするにあたり、すぐに、下記のような「前提」を置くこととなりました。

●個々のGMの役割が異なる。

●個々のGMの(例えば予算規模やステークホルダー、ひいてはお金の出どころなど)環境や、課題が異なる。

●個々のGMの前提知識や、スキルが異なる。

●個々のGMの受講動機や、目的、研修への期待値が異なる。

そもそも集合研修を行うのに、個々の受講者の方の「違い」を吸収してひとつの研修を行うということは、よくあることなのですが、これだけ前提が異なるのは、かなり極端と言えるでしょう。一方で、グループワークを入れる、アクション・ラーニング的要素を入れるということは要望としてありましたから、それが故の難しさもあります。企画メンバで話し合っていくうちに、皆さんの期待値を事前に調査するとともに、一方で、共通の前提やゴールは設定しなければならないので、すぐに使える「実践的かつ普遍的なスキル」をきちんと定義しよう、そして、それらのスキルを学ぶにあたり、これだけの多様性を逆手にとって、多くの事例を共有し互いが学び合える場にもしよう、ただ、できることとできないことは事前にしっかりお知らせし、期待値調整をしようということになりました。

結果として、研修における「ゴール」を下記のように設定をすることにしました。

●個々のGMのもつ課題を共有し、様々な課題があることを知るとともに、(実践的かつ普遍的なスキルとして)課題の構造化の仕方を持ち帰ってもらう

●GMとして、スポーツサイドとマネジメントサイドの両輪を回すのが仕事であることを理解し、(実践的かつ普遍的なスキルとして)ゴールの設定方法や、課題解決の手法を学び、自らゴールを設定し、価値交換の仕方やクラブや選手の価値の上げ方を考え、課題解決の武器として持ち帰ってもらう

●自らのゴールに向けてのアクションプランの作り方を考え、(同じく、実践的かつ普遍的なスキルとして)GMとしての幅の拡げ方、アクションプランの質の上げ方を、持ち帰ってもらう

●目の前にチャンスがあること、自分たちのアクションでチャンスに変えられることを知り、チームに戻ったときにアクションの起こし方を持ち帰ってもらう

●他競技に学び、ベストプラクティスの学び方を持ち帰ってもらうとともに、ネットワークを持ち帰ってもらう

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これらを1泊2日の研修に落とし込むだけでも、なかなかの至難の業ではありましたが、何とか皆さんとの議論を通して、カリキュラムが出来上がりました。その内容と結果については、次回のコラムでお届けしたいと思います。

少し話は飛びますが、この研修の企画段階で、川淵キャプテンが「フロント、選手、指導者、レフリーのそれぞれが『プロたれ』」とおっしゃっているというエピソードをお聴きしました。私自身、日本のトップスポーツの競技力やプレゼンスの向上には、様々な課題とアプローチがあり、人財育成の余地はさまざまあると思っていましたが、まさに、そのことを一言で表しているのが、この言葉だと思いました。

競技面のみならず、クラブ経営や運営、競技指導者の指導力、審判・・など、関係するステークホルダー各々の力が強化されてこそ、日本のスポーツの発展がある、そのためには「人財育成」は重要なドライバになる、今も私はそれを信じて疑いません。そして、このGM研修もその一環にあることを深く認識し、ますます責任を感じるとともに、モチベーションが上がったのは言うまでもありません。

To be continued…(次回へ続く)

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