2017/06/30

「日本トップリーグ連携機構」のGM(ゼネラルマネージャー)研修会に登壇させて頂きました!! ~その2~

スポーツマネジメント人財

2017年1月21日、22日に行われた「日本トップリーグ連携機構」のGM(ゼネラルマネージャー)研修

会場は都内にある「味の素ナショナルトレーニングセンター」。様々な競技の専用競技場である「屋内トレーニングセンター」や「陸上トレーニング場」「屋内テニスコート」」や宿泊棟「アスリート・ヴィレッジ」を含む広大なこの施設は、日本の様々な競技のトップアスリートたちがトレーニングや合宿を行う施設として、また、ジュニア競技者の育成の場として利用されています。

研修初日、到着して最初に入り口で鉢合わせになったのは、あの「中垣内祐一」氏でした。(バレーボール出身の私には、それだけで、この施設の偉大さを認識しました。)

前回のコラムで、川淵キャプテンが唱えておられる「トップリーグの連携の意義」について触れましたが、ここで様々な競技のトップアスリートたちが、それぞれ合宿し技術向上に取り組むだけでなく、食堂や様々な施設で顔を合わせたりコミュニケーションを図ることで、お互いに刺激を受け合う効果があるのだと、JTLの事務局長からお聞きしました。私が研修の2日間で食堂だけでも顔を合わせたのは、合宿を行っていた女子サッカー代表「なでしこ」の選手たち、「池江璃花子」選手ら水泳の強化選手たち、バレーやバスケのジュニア(U15)の選手等、多くの有名アスリートやヘッドコーチなどの指導者であったことは、日本スポーツ界の頂点のアスリートたちを育成する「聖地」であることを実感させてくれました。

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話が少しそれましたが、さて、GM研修会の当日。この日集まったのは、その所属するスポーツ団体が「日本女子サッカーリーグ」「ホッケー日本リーグ」「日本女子ソフトボールリーグ」「日本フットサルリーグ」「日本アメリカンフットボール協会」「日本フットボールリーグ」「日本プロサッカーリーグ」と7競技団体、15名のGMの方々でした。実のところGMと言っても、具体的な役職名は、事務局長だったり、監督、チーム部長、理事、営業部長、総務部長、コーチ、等々、実は、さまざま。

前回のコラムで述べたように、日本のトップリーグでさえ、GM(ゼネラルマネージャー)の役割は不明確で、皆さんの立ち位置は多種多様。GMのプロ化はおろか専門職化さえまだまだで、本来、ここから、日本のスポーツ界は人財開発や育成を構築しなければならないように思います。とはいいながら、現場ではそんな建前よりも目の前にチームがあり、クラブがあり、日々の運営があります。それらの現場で日々ご苦労されている皆さんの問題意識は高く、学ぶ意欲の高い受講者の方々が、各リーグから集まってこられました。

とはいえ、これも前回記したように、また、想定どおり、事前調査の結果による皆さんの研修への期待値は、多岐に渡りました。「課題解決のヒントを学びたい」「リーダーシップについて学びたい」「様々なステークホルダーとのコミュニケーションの取り方について学びたい」「そもそもGMに何が求められているのか知りたい」・・・このあたりまでは、この研修での守備範囲です。しかしながら「クラブアイデンティティの構築について知りたい」「ビジョン構築について知りたい」「組織運営体制、経営安定化に向けてのノウハウを学びたい」「活動資金の確保・スポンサー獲得について」「行政や地域との連携事例」「良いクラブ・魅力あるクラブにするためのノウハウ」など、皆さんの期待値は幅広く、率直に言って、一回の研修だけで包括できる範囲ではありません。

とはいえ、できる限り、皆さんの期待に応えたい。2日間の研修で皆さんとのコミュニケーションを密にしていけばしていくほど、そう強く感じるのでした。

さて、全体のカリキュラムについてご紹介しましょう。

冒頭のご挨拶、オリエンテーションに続き、まずは、スポーツ庁の「松山大貴」参事官(民間スポーツ担当)付参事官補佐より、講演「スポーツの成長産業化について」がありました。
その内容は刺激的で、名目GDP600兆円を目指す日本の産業振興(具体的には、「日本再興戦略2016」)において、スポーツ市場の拡大(2015年5.5兆円規模を、2025年15兆円へ)がいかにキーとなるか、また、そのための具体的な施策や取り組み、特に「スポーツ未来開拓会議」で議論されている課題やその施策、様々なデータが紹介されました。ふだんなかなか目にすることや耳にすることのない内容、もっとこういう内容が一般の人々に届くといいなと切に思いました。もっともっと多様な人たちを巻き込んでいけたらいいなとも。そして、その課題の中にも当然ながら「スポーツ人材の育成・活用」が取り上げられており、様々な構想が進んでいました。ですが、個人的に一番インプレッシブだったのは、松山講師の「私は、スポーツがなくなったらどうしようといつも考えている」という一言でした。極論すると「スポーツがなくなるという危機感が、皆さんにはありますか?」と問うておられるものと理解しました。冒頭、頭をがつんとやられた感じです。

続いて、SHC(Sports Human Capital)の中村さんから「研修会の目的」を丁寧に解説していただきました。本研修の中核部分は、私の担当部分の「コミュニケーション/リーダーシップを考える」のワークショップを中心にしたセッションと「TRENSYS」代表の「上田大介」講師による「スポーツクラブとソーシャルメディア」のレクチャの二段構えで構成することになっていました。

先にご紹介しておくと、上田先生の「ソーシャルメディア」に関する講義は、聴かれた方ならわかりますが、抜群の説得力と迫力に満ちた、かつ、上田先生の個性溢れる情熱的な講義です。いつも直前まで参加者や関係者の情報を収集され、「ソーシャルメディア」がいかにポジティブにもネガティブにも作用するツールであり武器にもなりうるかを、分かりやすく情熱的に伝えてくださいます。スポーツ界や芸能界などでも引っ張りだこの上田先生の講義は、日本のアスリートや芸能人をどれだけ、リスクから守ってくれたか、きっと計り知れません。トップリーグのようなスポーツ界に従事するアスリートのみならず、誰もが現在のこのネット社会で必要とされるスキルともいえます。皆さんも、初めて聞いた上田先生の講義にかなり刺激と問題意識を持たれ、すぐにでも持ち帰ってチーム内で共有したいと思われたようです。

上田先生

さて、最後に私の担当部分について。 前回でも触れたように、今回の研修では、多岐に渡るGMの方々の学びの場として、より実践的で獲得できるスキルを明確にするために「アクション・ラーニング」的な要素を取り入れたものにし、「普遍的で実践的なスキルを持ち帰り、使えるようにする」というゴールを設定しました。(具体的な研修の前提やゴールについては、前回のコラムを参照ください。)
レクチャとワークショップで取り上げた内容は、下記のとおりです。

●課題を共有する。

●コミュニケーションとリーダーシップを学ぶ。

●GMとして、あるべき姿、成功イメージを考える。

●各自のゴールを設定してみる。

●課題解決のシナリオの作り方を学ぶ。

●そのうえで、課題解決のためのシナリオを作成する(可視化する)。

●それぞれのゴールと課題解決のシナリオを共有する。

レクチャでは、コミュニケーションの考え方、リーダーシップとコミュニケーションの関係、及び、状況対応型のリーダシップ、コミュニケーションステップなどを取り上げ、皆さんに、ミニテストやグループワークに取り組んで頂きました。また、ワークショップでは、前半は、それぞれのGMの方の課題を洗い出し、課題を共有。 後半は、いったんGMとしての成功イメージを(いくつかの切り口を提示して)描き、あるべき姿を考えたうえで、ゴールを設定していただきました。次に、課題解決のシナリオの作り方をレクチャし、ゴールを達成するための、課題解決のシナリオを作ります。ワークショップの後半は、個々のGMの方の環境や役割が異なるため、個人ワークを中心にしつつ、段階的に情報を共有し、互いの刺激や学びを得られる場も作るようにしました。

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前半が190分、後半が180分、まとめが90分という、ワークとしてはかなりハードな時間帯ではありましたが、皆さん、時に頭を抱え、時に模造紙上にポストイットがいっぱいになり、時に他の受講者の方の発表にうーんとうなり声をあげ、自身の課題解決のシナリオを可視化するというワークに取り組んで頂きました。それは決して簡単ではなく、アウトプットに至る産みの苦しみを味わっていただけたのは、それだけ皆さんが、真剣に(単に研修という机上の話ではなく)自分ゴトで取り組んでくださったからだと思います。「課題解決のツールとしての武器を持つ」ということを学び、それを、即その場で実践、それぞれのシナリオが生まれていきます。 そして、途中で「自分のゴールは果たしてこれでいいのか?」との疑問を持つに至り、ゴール設定からやり直しという方も、実は、いらっしゃいました。

実のところ、このこと、すなわち、自分が思ってきた「ゴールの設定」は、本当にこれでよかったのか?「ゴールそのものが違ったのではないか?」この気づきが、実は、最も重要なことだったのです。

前回のコラムで述べたように、GMの方の「役割さえ明確でない」「地位が確立していない」という特殊性かもしれません。でも、それが、現状。 そのことに不安や不満を抱くよりも、それはそれとして、現状で何ができるのか、どう頑張れるのか、その頑張り方が本当に正しいのか?、そこに向き合って頂き「クラブの価値を上げる」ということはどういうことか? 自分たちが目指すべき「頂き」は、これでよいのか? それらに再度じっくりと向き合って頂くことが、とても大きな意義だったように思います。

スポーツ界全体が、そのこと、すなわち「自分たちは、どこに向かっていくべきなのか?」を再度問うことと、それらをスポーツ界全体として「(目標を)共有」すること、共有して「資産(ノウハウ)」としていくこと、そしてそれらを「可視化」すること、そのことが、この「トップリーグ連携機構」の設立趣旨にもシンクロし、かつ、スポーツ界全体の強化、プレゼンス向上に重要なことではないかと、お一人ひとりの真剣に取り組む姿勢を見ながら、私自身も改めて感じていました。

「持ち帰って、ぜひつづきをやりたい」「ゴールの設定から、もう一度考え直したい」という、皆さんの真剣な眼差しと取り組まれた真摯な姿勢が、とてもとても深く印象に残りました。私にとっても、チャレンジングでしたが、しばらくの間、「もっとあの時間内でできたことはないだろうか?」「果たして本当のゴールに目が向いただろうか?」、できれば「つづきの検討のフォローアップができないだろうか?」などとも、頭の中で反芻していました。できることは、1.5日という限られた時間でしたが、もっとあったようにも感じています。それだけ、答えの出ないゴールに向き合っておられる、GMの方々。 彼らと共に過ごし、共に考え、共にシナリオを作るワークショップを通し、やはり、「人財開発・人財育成」は、スポーツ界発展のキーファクターであり、ドライバになりうると、強く感じた2日間となりました。

最後に、この機会を与えて頂いた、「日本トップリーグ連携機構」の関係者の皆様、「SHC(Sports Human Capital)」の中村さん、田窪さん、一緒に講師を務めて下さった上田さんほか、関係者の皆様に、深く感謝申し上げます。ありがとうございました。

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