2018/03/26

「ALS」患者さんや分身ロボット「オリヒメ」と、千葉ジェッツふなばしでのBリーグ「車椅子観戦ツアー」を実施しました!

スポーツ・バスケットボール・Bリーグ

きっかけは、友人でALS(筋萎縮性側索硬化症)患者である「高野 元(たかの はじめ)」さんがfacebookにアップされていた「楽天オープン」の観戦記事でした。とてもステキだなと思って、高野さんがスポーツ好きであることも思い出し、「Bリーグも観てみませんか?」と、思わず、コメントを投稿しました。

元々、昨シーズンから、理事を務めている「Bリーグ」の「私的観戦ツアー」と称する企画を行っていました。「一人でも多くの方にBリーグを観てもらいたい」そのために、「まずは友人や知人から初観戦の方のハードルを下げよう」と、全国各地で知人友人を中心に声を掛け、観戦ツアーを実施してきました。今シーズンも、大阪、京都、滋賀、千葉の開幕戦を皮切りに、シーズン中盤は、西宮や熊本のオールスターなど、その後も様々な地域や新しいパターンでやってみれたらよいなと思っていました。とはいえ、後に、高野さんから「知り合いを誘って観にいってみたいんだけど」というメッセージを頂いたときには、こんな大勢のツアーになるとは、正直、予想していませんでした。

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「高野 元」さんは、元々同じファシリテーションの師匠に学び、知り合ってすぐに前々職が同じN社で入社で2年違いであることを知りました。彼は研究所勤務で、在職中にスタンフォード大学にも留学、当時Googleの創業者と机を並べたという優秀で最先端のコンピュータサイエンスの研究者でした。その後、ベンチャ経営者兼コンサルタントという似通ったキャリアだったのもあり、意気投合したのですが、知り合って間もなく「ALS」という難病を発症(2013年に発症、2014年に告知)されたのを知ったときは、さすがに驚きとショックを隠せませんでした。

しかしながら、彼は、発症後も力強く生き、そのことにどれくらい私たちは励まされたでしょう。ALS患者当事者という立場で、難病の方々のQOL(Quality Of Life)を高めるために、テクノロジーをどう活用するか、行きにくい社会をどう改善するかに取り組み、自ら新しい治療法にチャレンジしたり、今も最先端のシステム開発や積極的に情報発信をしたり・・。そして、常に主体的に社会や人と関わり、前向きに人生を歩み、かつ、様々な社会課題に向き合い続けておられます。一方で、長い間プレイヤーとしてテニスをされてきた、スポーツマンでもありました。

その高野さんから「自分は、多くの方に支えられて社会や人とのつながりもあり、外に出られる。その僕が受けている恩恵を、同じALS患者の仲間にも少しでも「お裾分け」がしたい。だから、僕だけでなく(ALS患者の)仲間も一緒に観戦に行きたい。」というメッセージが届いたのです。日頃から高野さんの思いを聴いたり、取り組みを垣い間見ていたので、もちろんNOはありません。ただ、私も観戦ツアー自体の運営には慣れてきたものの、難病の患者さんをお連れするのは初めての経験だったので、正直不安は否めませんでした。どの試合会場で、いつ頃がよいか、いったいどんな観戦になるのだろうかと、考える時間を頂くことにしました。

色々な準備をできるだけ万全に行うことができ、少しでも気候が良い時期で、かつ、クラブの方とも十分なコミュニケーションをとり、意思の疎通ができたほうがよいだろうと考えた末に、「千葉ジェッツふなばし」の社長である「島田慎二」さんに相談をし、結果、快諾を頂き、3か月以上先の3月25日(日)に、「千葉ジェッツふなばし」のホームアリーナで「車椅子観戦ツアー」が実現することなりました。「千葉ジェッツふなばし」の皆さんには全面的に受け入れにご協力を頂き、さらには、ご厚意でサポートを含む全員(総勢20名)が、ご招待を頂けることになりました。実施が決まってから「観戦ツアー」までの3カ月間、島田社長や、運営責任者のIさんほか、ジェッツのフロントスタッフの皆さんには、事細かに相談にのっていただき、何より最大限のご配慮とご尽力を頂きました。

また、私一人では心もとなかったので、事前の高野さんとの打合せから、下見や様々な準備、当日のサポートまで、高野さんとも共通の友人の「中吉雅代(なかぎり まさよ)」さんが、全面的なヘルプをかってでてくれました。

高野さんは、胃婁から栄養を取り、気管切開をし気道食道分離をされています。専用車椅子にのり、ご家族や友人と外出や旅行もされます。言葉を発することはできなくなりましたが、目の動きで文字を選び、会話もできます。私たちとの打合せは、対面では、視線入力によりパソコンの画面や音声出力で、遠隔では、同じ入力方法で普通にメールやメッセージ交換を行うことができます。時間もたっぷりあったので、高野さんのご自宅に伺ったり、メッセージ交換をしたりしながら、高野さんの観戦のイメージや要望を聴いたり、クラブとの確認や折衝を行ったりすることができました。途中、私たちの理解不足や誤解で、イメージが合わなかったり、準備への不安がふつふつと沸いてきたりしましたが、お互いにわからないことを聞き合う、最後まで妥協せずに「こうしたほうが良いのではないか」と思うことを、伝え合う、というやり方で、ほぼ当初の希望通りの「観戦ツアー」を開催することができました。

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一緒にサポートしてくれた中吉さんと。   高野さんご家族、サポート頂いた川本さん、立野さんと。

最も大きかった不安は、「呼吸器」をつけているという比較的重篤な患者さんのことをお聴きしていたので、万が一のこと(呼吸器が壊れるとか、体調が急に悪くなるとか、電源が何らかの事故で供給できなくなるとか)、命に係わるような突発事項が起こる可能性はないと言えるのか?そういう時のリスク管理として考えておくべきことは何か?そのあたりが、確信がもてず、実のところ、「本当にこれをお受けしてよかったのだろうか?」と思うことも度々で、その都度、確認事項をつぶしてきたつもりでしたが、それでも、観戦ツアーの前日は、この私が、ほぼ一睡もできませんでした。(意外と、蚤の心臓です。) 

最終的に、高野さん、「武藤将胤」さん、「真下貴久」さん、「酒井ひとみ」さんの4名の「現地観戦」のALS患者さんとご家族や介助者の皆さん、さらには、最大の難関であった分身ロボット「オリヒメ」による佐賀県在住のALS患者さん「中野玄三」さんの「遠隔観戦」者の方とのツアーを実施することができました。患者たちさんは、私の不安をよそにとても明るく、元気いっぱいで、というより、カッコいい方々ばかり。彼らと現地で落ち合い、顔を見たとたんに、私の不安は吹き飛びました。

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オリイ研究所の方のサポートにより、熱心に観戦する、佐賀の中野玄三さん観戦用分身ロボット「オリヒメ」。

中吉さんのほかに、さらに直前にお願いして、私の観戦ツアーで何度も船橋アリーナを訪れて下さっていて、かつ医療従事者でもある「立野裕子」さんにもヘルプを頂きました。そして佐賀に届ける「オリヒメ」観戦のサポートは、「オリイ研究所」からインターンの「中嶋誠士郎さん」と「尹寧得(ユンニョントク)さん」がサポートとして参加してくださいました。

当日は、集合時刻に皆さん到着、車椅子席までの動線移動もスムーズに、オープニングセレモニーから試合終了までフルコースでたっぷり観戦頂くことができました。高野さん初め、ほぼ全員が初観戦でしたが、オープニングセレモニーから、皆さんのはじけるような笑顔や歓声、「楽しい!」という声や声にならない声、「Bリーグ、イケてますか?」という私の問いかけに対して、体いっぱいに表現してくださる「イケてる!」「カッコいい!」という反応、オリヒメの向こうでも「ノリノリ」で観戦してくださった佐賀の「中野玄三」さん。サポートの方々も我を忘れて応援してくださり、ジェッツは大勝。おかげさまで大成功の「車椅子観戦ツアー」となりました。

 

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「オリヒメ」の向こうの中野さんと会話される現地観戦の真下さん(左)ご夫妻と武藤さんご夫妻(右)。

最後は、これも「千葉ジェッツふなばし」さんのご厚意で、参加者全員がアリーナにおりてボールを触ったり、「スタージェッツ」の皆さんと記念撮影をしたり・・・。なんといっても、「オリヒメ」は「スタージェッツ」や、ちびっ子スタージェッツから大人気でした。オリヒメの向こうから佐賀の中野さんも「最高に楽しかった!」とメッセージを頂き、私も、皆さんから、たくさんの「初体験」や感動を頂きました。

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「オリヒメ」は、「スタージェッツ」(千葉ジェッツふなばしのチアリーダーズ)や、ちびっ子スタージェッツにもモテモテ。

これも、高野さんや患者さんご自身の熱い思いや行動力、そして、皆さんのサポート、そして「千葉ジェッツふなばし」の島田社長やIさんのご尽力、当日私たちの動線確保や案内、ケアをして下さった全てのジェッツのスタッフの方々のホスピタリティのおかげです。参加した皆さんがそのホスピタリティの高さについて、感想を漏らしておられました。さらには、オリイ研究所の皆さんからも、今までの現場でこんなに通信環境が快適だったことはないと太鼓判を頂きました。

「Bリーグ車椅子観戦ツアー」に遠くからお越し下さった患者さん、ご家族、ヘルパーの方々、皆さんが、観戦を終え興奮気味に、「楽しかった」「またBリーグを観に行きたい」と言って下さり、お一人お一人と握手を交わし、彼らの笑顔を見たときに、ようやく「実現できてよかった」と思え、ほっと胸をなでおろしました。「オリヒメ」のおかげで「会場に足を運んでも運べなくても、スポーツ観戦、Bリーグ観戦が楽しめる」「難病や障がいがあってもなくても、違いを超えて混ざり合って、共に、スポーツ観戦を楽しめる」ことも実証できました。

お運びくださった皆さん、ヘルプしてくださった皆さん、そして「千葉ジェッツふなばし」の皆さん、ご理解と側面でサポート下さったBリーグの関係者の皆さん、本当に、ありがとうございました。

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日頃からヘルプをされている川本さんと高野さん。

 

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