「人財育成プログラムの開発」に先立ち、「どんな人財を育てたいのか」を議論し、そのうえで「必要なスキルセット」(ここでは、スキル、知識、技術、コンピテンシー)を洗い出す。そして、それらをプログラムに反映させるよう、カリキュラムを設計します。これは、企業内教育でも、本プロジェクトのような大学や教育機関であればなおのこと重要です。なぜなら、企業ならば生産活動をそのものを行う、すなわち価値を生み出す「人」が必要とするスキルやコンピテンシーに直結し、教育機関では差別化すべき「教育プログラム=その教育機関の価値」そのものだからです。
さて、鳥大では、どのようなアプローチをしたのでしょうか。本稿では「育てたい人財像」と「必要なスキルセットの洗い出し」までをご紹介したいと思います。詳細を記載すると論文ができ上るくらいの分量にはなりますので、ここでは、概要にとどめますが、主として下記のようなステップを踏んでいます。
(1)事前調査・分析
・プロジェクトでリーダーシップをとる先生方へのインタビュー (企業では経営層にあたります)
・既存の教育プログラムの調査・分析
・「未来医療研究人材養成拠点形成事業」でそれまでに作られたアウトプットやコンセプトの分析 (これまでのプロジェクトとの整合をとるためです)
(2)「育てたい人財像」構想づくり
・先生方とのワークショップ
・深堀りしたい概念やキーワードのピックアップ (ここだけは拘りたいという部分を引き出します)
・先生方との深堀りワークショップ (上記をできる限り具体化、言語化します)
(3)「必要なスキルセットの洗い出し」とまとめ
・実際に学ぶ大学院生への事前アンケートとインタビュー (ニーズ側の調査になります)
・教員の先生方への事前アンケートとインタビュー (シーズ側+伝えたい側の調査になります)
・先生方とのワークショップ
イメージを持っていただくために、「育てたい人財像」の構想づくりのワークショップでの一幕をご紹介しましょう。
前回の記事で、こういう時(育てたい人財像を問うた時)に「抽象的な言葉が宙を舞う」というお話しをしましたが、本プロジェクトでも、そういう現象が起きました。例えば「自己を超越できる人」、「変な研究ができる人」、「人の命に係わる医療に従事するにふさわしい人」等々です。まさに抽象的で具体的なイメージがわきません。ただ、それは悪いことではなく、その言葉を発した先生にはそのイメージや人財像が明確にあるのです。そこで、引っかかった言葉や発言された先生が目を輝かせておっしゃった言葉、熱い想いをもって語られた言葉などを、取り上げて、深堀りをするのです。「自己を超越するってなぜ必要なんですか?」「例えばどういうことでしょう?」「それをどんな時に感じますか?」「それはなぜですか?」等々・・それこそ、「なぜなぜ」を繰り返し、深堀りをしていくことで、先生方が持つイメージを具体化していき、皆さんで共有していきます。これは、なかなか、楽しい作業でもあります。時に「う~ん」と唸ったまま、立ち止まってしまわれることもあります。そこに、「なぜなぜ」とボールを投げ続ける、違う角度からボールを投げてみる、それが、いわゆるファシリテーションの醍醐味でもあります。
そんな「産みの苦しみ」を味わいながらも、「育てたい人財像」と「必要なスキルセット」を対応させ、まとめていく作業の、最後は持ち帰り。整理して体系立てて言語化、可視化するのは、私の宿題となります。私自身が、自社に持ち帰り、うんうん唸りながら最後の「産みの苦しみ」を味わうことになりました。
To be Continued …
<冒頭の写真は、鳥取大学医学部がある米子市の、冬の海岸の光景です。>