去る2017年9月13日、幕張メッセで行われた「スポーツビジネスジャパン2017」。
政府の2020年GDP600兆円政策の文脈のなかで、経済産業省が「スポーツの成長産業化」(2012年5.5兆円を2025年に15兆円へ)を謳うなか、Jリーグと立命館大学との協同プログラム産学連携による「スポーツビジネス経営人材育成プログラム」が採択されたのは、平成28年度に遡ります。弊社は、そのプログラムのコンソーシアム会議メンバとして活動、コンセプトづくりから、目指すべき人財像や必要なスキルセットの洗い出しなどの活動に、積極的に参画してきました。
そのプログラムの詳細は、後述で、また改めてご紹介するとして、この日、登壇させていただいた「産学連携によるスポーツ産業の活性化と経営人財の育成 ~スポーツマネジメント系大学院の新展開~」についてご紹介しておきたいと思います。
「スポーツビジネスジャパン2017」は、上記のような、政府のスポーツ成長産業化政策や、2020東京オリンピック・パラリンピックをはじめとするワールドクラスの大会誘致を追い風に、スポーツ産業活性化を目的に「スポーツ産業」に特化した国内初のビジネス展示会&コンファレンスとして開催されました。
会場では、(学会主催だったこともあり、)スポーツマネジメント系の学部を持つ大学や大学院の展示、スポーツ用品メーカーや設備メーカー、イベント運営企業などのデモンストレーション等のほか、主催者の声かけで、スポーツに関わるビジネスのアイデアを持つ企業などが出展・参加をしていました。また、3日間の会期中は、「川淵三郎」キャプテンの特別公演や、同時開催の「スタジアム&アリーナ」では、「鈴木大地」スポーツ庁長官や「馳浩」議員のほか、Bリーグの「大河正明」チェアマンや、同じくBリーグ理事の「境田正樹」先生もパネラーとして登壇されていました。もちろん、野球、サッカーなどのスポーツ関係者のみならず、大学関係者や関連産業界の方々も、いわゆる「有名どころ」が一同に会したカンファレンスとなりました。
私たちのパネルディスカッションも、展示会場の一角のセミナールームで開催され、多くのスポーツ産業関係者に足をお運び頂きました。その際の登壇者は以下の通りです。
講師:水野勝太氏(データスタジアム株式会社 取締役常務執行役員
竹内美奈子氏(株式会社TM Future 代表取締役 Bリーグ理事)
原田宗彦氏(早稲田大学スポーツ科学学術院 教授 スポーツMBA Essence プログラムリーダー)
コーディネーター:長積 仁氏 立命館大学 スポーツ健康科学部 教授
先にご紹介しましたように、私たちは、長積先生をプログラムオーナーとする「産学連携によるスポーツビジネス経営人材育成プログラム」で活動をしており、データスタジアム社の「水野勝太」さんも同じコンソーシアム会議メンバです。
そもそも本プログラムは、Jリーグと立命館の協業からスタートし、現在は「スポーツヒューマンキャピタル(以下、SHC)」が運営されている「スポーツ経営人材の育成」プログラムの実績が認められ、新たに採択を受けたプログラムです。「SHC」が「スポーツそのもの」を対象とするビジネスの経営人材を育成されているのに対し、こちらのプログラムは、「スポーツ×〇〇」の事業、すなわち、「スポーツをコンテンツにした周辺の産業」において、新しいビジネスや事業価値を作り出すことのできる人財育成を目指しています。スポーツを核としながらも、スポーツそのものの事業拡大だけでは、15兆円の成長産業化は難しく、その周辺に新しい「マーケットスペース」を作り出す必要があると考えるからです。
前述の水野さんの「データスタジアム」社は、すでに「スポーツ×データ」という視点で、次々に新しい価値を創造され、ビジネスを展開されています。それ以外にも、「スポーツ×健康」「スポーツ×食」「スポーツ×IT」・・・といった新しいマーケットはまだまだ未開拓であり、ポテンシャルもあると考えています。(ただ、今までさほど実績もなくまだまだ未開拓なのは、そこには何かしら壁や課題があるはずなのです。)
このパネルディスカッションでは、そのような「データスタジアム」社の希少な先進事例のご紹介に続き、私からは、スポーツ産業の現状認識、ポテンシャルと課題、そして人財育成の立場からの問題提起と、育成のポイントについてお話しさせていただきました。早稲田大学の原田先生からは、同大学で展開されている「スポーツMBA Essence」プログラムが、長積先生からは、私たちが開発しようとしている「スポーツビジネスエクステンション」講座の構想が紹介されました。
私からの問題提起の一つは、「スポーツ界の中にスポーツをマネタイズできる人財が育成されていない」という点です。また、スポーツには、人に感動を与えることのできる底知れぬ「価値」があることを、誰もが知っているのに、だからこそ企業が多くのスポーツに対する支援をしてくださっているのに、それが彼らにとって「CSR」としてのベネフィット以上になりにくい、ただ一方的に支援をするにとどまっていることが多い、という点です。これでは、企業の方もやがて体力が持たなくなったり、多くの株主に説明がつかなくなり、持続可能性という観点ではいずれ厳しい状況に陥ります。「スポーツへの一方的な支援」ではなく「企業がスポーツとのWinWinを作り出す」「スポーツをコンテンツに価値を生み出す」「スポーツをもとに企業価値を向上できる」ことの実証とそのためのノウハウの蓄積、ひいては人財育成が必要と感じています。
それが、私の考える「スポーツをマネタイズできる人財の育成」です。当然ながら、生み出された価値は、企業や企業のお客様にも還元され、スポーツそのものに還元されなければなりません。そして「アスリートの強化」や「スポーツを支え、周辺で働く人々の報酬」に循環させていくことで、スポーツそのもののプレゼンスの向上や、強化そのものにもつなげていかねばなりません。
実のところ、スポーツ界に新参者の私が、「スポーツのマネタイズ」についてあのような場で問題提起することは、チャレンジングでもありました。長い間、いわゆる「体育」が重んじられてきた日本のスポーツ界にとって、反発を招くことも十分想定されたからです。とはいえ、スポーツそのものの成長発展、繰り返しになりますが、アスリートやスポーツ関係者の環境改善、ひいては「スポーツの成長産業化」を思うとき、提起せずにはいられませんでした。その場で、想定していたようにその点への「質問」も出ましたが、質問もでたおかげで、マネタイズが、スポーツそのものにとっても必ずメリットがあるはずだという点も、重ねて説明ができ、ご理解いただくこともできました。
コンソーシアム活動は、引き続き、2018年度も進めていくことになります。このパネルをきっかけに、次の一歩である「パイロット講座」の開設に向けても動き始めました。そして、2018年秋の開講に向けて、動き出します。また、こちらで、ご報告できればと思います。
尚、「スポーツビジネスジャパン2018」は、2018年8月30~31日に、大阪ナレッジキャピタルコングレコンベンションセンターにて開催されます。