2016/10/03

日経ビジネススクール×早稲田大学ビジネススクール主催「MBA Essentials 2016<アドバンスコース>『ダイバーシティマネジメント』」のコーディネーター兼ファシリテーターを務めました! 第三話

ダイバーシティ教育

日経新聞ビジネススクールと早稲田大学ビジネススクールによる、「MBA Essentials 2016<アドバンス> コース 『ダイバーシティマネジメント』」。

前半の2回を終え、バトンはワークショップ担当の私に渡されました。「ダイバーシティの本質や理論をきちんと理解し、かつ、自分ゴトとして身に付け(現場で実践のリーダーとなれ)る」ことを到達目標にセット(()内は私が自身のなかで敢えて高い到達レベルを設定)した本セミナーで、「そもそも多様な受講者のニーズにどう応え、このセミナーの効果と満足度をいかに最大化するか・・。」それが、自らに課したミッションでした。

「What」は、コース設計を考えていた時から、ある程度仮説を立てていました。学ぶべきことは、前半の先生方のレクチャで得た理論や考え方を定着させることで「ダイバーシティ・リテラシー」を身に付けること、それを、各々の現場で実践するための「ダイバーシティ・リーダーシップ」を身に付けること、そして、その大きな要素が「ダイバーシティ・コミュニケーション」のスキルではないかと考えていました。これらの学ぶべき「What」は、それぞれの構成要素が何か?で定義することができます。それも、ほぼ可視化(言語化)できていましたが、改めて因数分解すると、前半のレクチャから取り入れるべき要素がいくつかあることも、新たにわかりました。

では、それをどうやって、皆さんに身に付けて頂くか・・・「How」の部分は、毎回、受講者のプロファイルや、環境、役割などによって、アレンジをしなければなりません。しかも、それが一社で行う内部向け「ダイバーシティ」教育であれば、おおよそやり方は決まってくるわけですが、今回は、50名の本当に多様な皆さんが受講者です。属性(性別、年齢、業種、職種、役職・・・)等も様々ですし、皆さん一人一人の立場や役割も違えば、環境も異なり、当然ながら、価値観も違えば、ニーズも多種多様です。

ひとつ言えることは、そもそも、こういうセミナーに参加しようという方々は、そもそもの「多様性の受容力が高い」、当然ながら「問題意識が高い」ということです。すなわち、自分ゴトに引き寄せる力やモチベーションはある程度あり「What」をきちんと明確にしてあげれば、自発的にどんどん吸収される力が高いということ。これは、社内で集められる集合教育よりも、このような研修のメリットでもあります。そして、その裏腹であるのは、ニーズに対するこだわりが強く、期待値や要求レベルが高いということ。

・・・などなどと一人で禅問答のように仮説とシュミレーションを繰り返しながら、ワークショップの内容やファシリテーションシナリオを考えていくことになりました。

また、皆さんの反応から「ネットワーキング」(人脈形成や相互の意見交換)へのニーズも高かったので、1日目は属性によるグループ分けをし、3日目、4日目(この2回は議論の連続性から同じグループでしたが)は、また異なるグループ分けにして、できるだけ多くの方と接点が持てるようにもしました。

そして、迎えた3日目。会場は、虎ノ門ヒルズ側の(カフェでは、人数オーバーでワークショップは不可のため)ご配慮で特別に用意してもらった、大ホール。広々とした部屋のなかで、ゆとりのあるレイアウトでグループワークを行うことができました。1日目にライトなワークショップを行っていたこともあり、また多様性受容力の高い皆さんのこと、新しいグループ分けをするとすぐに名刺交換が始まり、議論もすぐに活性化します。

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いくつかの事例紹介を含むインスピレーショントークに引き続き、この日、私が用意したお題(問い)は、「多様性のある組織を想定してみて、果たして何が起こるかを実体験してみる」というロールプレイング。ある程度、こちらで属性や雇用形態、年代や役職、働き方や価値観などの異なる役を想定しましたが、皆さんそれぞれの役になり切り、バーチャル組織が出来ていきます。個々が想定の役割を演じるなかで、組織やチームにどんなコンフリクトが起きるか、どんな言動が起こりうるか、いつも批判的にみていた相手の立場にたつとどんな思考になるか、「違う」相手と協働するためにコミュニケーションするとはどういうことか、そして、多様なタレントが集まり組織が共通の目標に向かうために必要なことは何か・・・そんなことを体験して頂く「場」が出来上がりました。

そのことで、「ダイバーシティ・リテラシー」すなわち、「組織にはどんなダイバーシティがありうるか?」「なぜダイバーシティを推進する必要があるのか?」「なぜダイバーシティは侵害されるのか?」「ダイバーシティを推進上、どんなステップ(ステータス)にあるか?」・・・といったことを考えられるようになることが目的です。

そうしてここに来てくださった方々が、「自転車に乗るように」、いちいち細かいことを考えずとも、眉間にしわを寄せることもなく、「ダイバーシティ」を身に付け(まとい)、振る舞えるようになれたら・・。それが私の目指す「ダイバーシティ・リテラシー」です。

そして、4日目にまたがり、「各々の多様性組織のあるべき姿やゴールを描き、そのために必要な施策」を、ワークショップで段階的に考えて頂くこと、そして、最後に「ダイバーシティ推進に必要なスキル」すなわち「ダイバーシティ・リーダーシップ」についての「気づき」をまとめて頂きました。

詳細は省きますが、7つに分けた各グループは、「地方や海外に工場を持つ製造業」や「介護事業者」などの組織が想定され、それぞれに組織のゴールが設定され、その中で起こりうる多様性と推進施策が議論されました。おそらく皆さんも気づかれたと思いますが、一言で「ダイバーシティ」といっても、そこで起きている「ダイバーシティ」の状況そのものが多様で、推進のステージも多様、そして、そもそも何のために「ダイバーシティ」を推進するかという組織の目的も多様なのです。ステージにも関連しますが、例えば、「良い人財を獲得し、リテンションさせる」ために「ダイバーシティ」推進が必要な組織もあれば、「働きやすさを実現させたい」という組織もあれば、「商品やサービス開発にイノベーションが必要である」がために、多様性を必要とする組織もあります。そして、推進策のキーコンテンツは、「公正な人事評価」や「ネットワーキング」、「教育」等々・・・これまた多種多様であり、ひとつひとつが深い存在意義をもち、相互にシナジーをもつものであるはずなのです。

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このように、皆さんの答えそのものが「多様」で、それを多様な人たちと考えること自体が「わくわくする」ことなのです。言葉やこの記事の文章だけでお伝えするのは難しいですが、受講者の方々の楽しそうな対話や、グループワークの様子、そして、ネットワーキングパーティで頂いた皆さんの感想からも、そのことが実感でき、そう断言することに、私自身、自信を持つこともできました。(そうでない「ダイバーシティ」なんてやらないほうがましだし、だとすればやり方が間違っているといっても過言ではありません。)少なくとも、「大変」だし「コストがかる」こともあれば、一時的に「効率が落ちる」ことがあるとしても、「ダイバーシティ」を、組織や事業にとってベネフィットがあり、バリューのあるものとして捉えて頂くことが最も重要であり、その一端は実体験頂けたのではないかと思います。

確かに、今回の受容性の高い皆さん同士の中で考えられたこと、できたことが、組織に戻ると、また、粘土層対策に頭を悩ませることになるかもしれません。ただ、そこにあるのは、あきらめではなく、「本質の理解」「ダイバーシティ・リテラシー」「ダイバーシティ・リーダーシップ」という引き出しを増やした皆さんが、さまざまな組織で「ダイバーシティを考えることは、クリエイティブで楽しいこと」という姿勢や(川本先生のおっしゃった)笑顔で「ダイバーシティ・コミュニケーション」を自在に発揮して下さることで、新たな一歩を踏み出していただければと思います。

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4日目の終了後は早稲田大学日本橋キャンパスのある日本橋コレドのスペイン料理レストランでのネットワーキングパーティランチョン。私は、1時間で(Bリーグ開幕戦観戦のため)中締めまでの参加となりましたが、ともかくも「楽しかった」「面白かった」という声が聞けてほっとしました。その後の報告は、振り返りの会やアンケートで聴けることと思います。

もちろん反省点は多々あり、時間がタイトな中、どこまでインスピレーショントークでインプット(ヒント)を提示し、アウトプットの要求レベルをどこまであげるか、考える時間をとこまでとれるかのせめぎ合いには、最後まで悩みました。やっぱり、ちょっと欲張りすぎたかもしれません・・・。

最後に、今回ご一緒した川本先生や猪熊さんからは、たくさんの示唆とインスピレーションを頂き、私自身の学びの場ともなりました。

せっかくなので、「川本先生語録」をここに記して、自身の学びとして定着させたいと思います。

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」

「コンセプチュアルに理解する、マクロで理解することを疎かにしない」

「変革を起こすときは、インセンティブを与えること」

「分析をするには比較があったほうが良い」

そして

「あらゆる人には、なにか必ず(あらゆる)能力がある。」

全日程に渡り、質疑応答や突然の振りにも対応してくださり、受講者にとって多くの重みあるアドバイスを頂いた川本先生、猪熊さん、準備段階からお世話になった日経新聞重原さん、中嶋さん、前澤さん、大竹さん、早稲田大学松本さん、齋藤圭祐さん、そして受講生の皆さん、お世話になりました! またどこかで!!

 

 

 

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