滋賀県庁職員有志の方々を中心にした「県庁Σ塾」。そのゲストスピーカーにお招きいただきました。
人事や人財育成が専門の幹部職の方や課長級の方から新人の方々、そして、お隣の京都市職員の方から、大学講師の方まで。多様な皆さんが集まってくださいました。
アイスブレークのあと、自己紹介を軽く、そして、まずは皆さんの希望をお訊きしてみました。
中西さんの要望から、ダイバーシティ辺りの話からかなと思っていましたが、見事に予想は外れ、皆さんのご希望は、「『タレントマネジメント』の考え方を知りたい。」
皆さん、真面目です。持論を展開するより、皆さんからの声をお聴きし・・・と思っていましたが、まずは、皆さんの「知りたい」欲求に素直にお応えすることに。
「人の『持ち味』を活かして組織を強くする」とは、どういうことか? どんな考え方やアプローチがあるのか? その「肝」は何か? 少し体系的に、また事例を交えてお話しました。
特に関心を持たれたテーマのひとつが「メンタリング・インタビュー」。人の持ち味や強みをどうやって引き出すのか? そんなことが本当に初対面で1時間やそこらでできるのか? メンタリング・インタビューを受けるということは、その人にとってどういうことか?(本当に、腹を割って話せるものか?)。。。どれも、もっともな疑問ですね。それに、ひとつひとつ事例や経験を元にエピソードを紹介させて頂き、皆さんも「なるほど」「理解できる気がする」、そして「こんなことがある、あんなこともあった」と、経験を披露して下さいました。
一方で、私が投げかけた問いに、疑問を感じた方もいらしたようです。
「自分の『持ち味』=タレントで、稼げるようになるということはどういうことか?」
曰く「公務員は、自分のスキルで『稼いでいる』という感覚がないので、それがモチベーションになることはないのではないか?」
私は「本当にそうでしょうか?」と思いました。「稼ぐ」という言葉だけが先走りし違和感があるのかもしれませんが、税金であれ、お客様から頂くお金であれ、その人や組織が自分(たち)の持つスキルや経験やノウハウで、人に真に必要とされ、対価を払う価値を認められ、役務を提供してもらいたいと願う。そのためにそのスキルや価値を高めること、質や利便性や効率を高める努力が必要なこと、そのことにさほど違いはないのではないかと、思いました。もちろん、競争という概念においては違いがあったとしても、だからといって、スキルや価値を高めなければ、真の意味ではやがて必要とされなくなる、という健全な危機感は必要ではないでしょうか。公共サービスも、我々市民が、人やサービスの質を選択する時代が来るように思います。
「自治体職員について教えてください。」
次に投げかけた問いには、参加者の皆さんに少しずつ立場や考えの違いがあり、面白く感じました。
事務分掌で考えられる方、ミッションで考えられる方、あるべき立ち位置や取り組む姿勢で考えられる方・・・それぞれ多様性があって面白いと思いました。私自身はまだまだ勉強不足かもしれませんが、その多様性こそ、これからの自治体や地域に必要なフレキシビリティではないかと。仕事はマニュアル通り一律ではなく、いかようにでも取り組みを工夫できる余地はあるし、目標やゴールさえ明確であれば、自ら仕事を作り出すことはできる。むしろそのクリエイティビティが問われる。企業では当たり前のこんな考え方が、公務員には馴染まないとすることは、組織の硬直化を招き、もはや時代に取り残されていくのではないかと思いました。
その後、少し「ダイバーシティ」や「緩やかな組織で人を活かすチームビルディング」について話題を提供し、皆さんに考えて頂きました。
私が関わっている、企業体ではない組織やチーム、例えば「(立命館大学)校友会」などは、自由意志をベースにした集まりであり、モチベーションもバラバラ、環境やバックグランドも、スキルもコミットメントもバラバラ、途中で放り出されても文句は言えないし、指示命令できるわけでもない、緩やかな「組織」です。ただ、それが単なる「集団」でなく「目的を共有した緩やかな組織化」をするとはどういうことか?そのためのチームビルディングに必要な事や、必要なリーダーシップとは???
それぞれに、チームメンバーならどういう姿勢で参加するか? リーダーなら? と、考えて頂きました。
さて、皆さんなら、どうでしょうか?
中西さん曰く、「総じて「聞く」(知識を仕入れる)のには慣れているが、自らの(一人称の)思いや考えで対話するのは苦手な職員が多い」ということでしたが、いえいえ、皆さん、ちゃんと思いを語ってくださいましたよ。
恐らく、この日この場に集まってくださった方々は、志も高く、学ぶ意欲や、健全な危機感や問題意識を持った方なのでしょう。その思いが、組織の中に伝わらず、「同じ船に乗れているだろうか?」「自分の仕事の意味は?」という疑問を吐露して下さった方もいらっしゃいました。
中西さんもおっしゃっていましたが、企業も自治体も、明確な目標を共有した人が組織体として集まっています。ただ、目を外に転じると、我々のお客様や自治体職員のお客様である地域住民には、全く異なる目的を持った異質で多様な人が存在し集合しています。 恐らく、「地域づくり」や、今ホットな「地域創生」も、そうした異質で多様な、ですが、生活や土地やもっというと「思い」に根差した個人を、必要に応じ、緩やかにチームビルドしていくこと、時に、緩やかに組織化していくことが必要になるのでしょう。そして、そのような緩やかな組織や、個人の意思をベースにした集まりにおける「人の能力を活かす」こと(タレントマネジメント)が、これからの日本の「地方創生」では、必要になっていくように思います。時に、誰でもが、機能に応じたリーダシップを取れることも必要でしょう。
つまり、厳格な組織内だけで完結せず、組織外にも通用する「タレントマネジメント」、いわば、組織を超えた「タレントマネジメント」を考える必要があること、それに私も改めて気づきました。
皆さんの視界も少し広げて頂くことはできたでしょうか?
私からの問いの投げかけと皆さんとの対話、その時間はあっという間に過ぎて2時間近くとなりました。そして、続きは、場所を変えて・・・ということになり、一旦その場はお開きに。
さて、今回、目標にした「自分ならどうする?」を考えて頂くことはできたでしょうか?
もちろん、正解が出たわけではないかもしれませんが、十分に「一人称」で考えて頂けたように思います。もちろん、外(私)から見た違和感を知って頂いたり、皆さんの視点を外に向けたり、それ自体は、皆さんにとっては、慣れないことだったかもしれません。そんな多少「荒療治」ともいえる私との対話を果たして楽しんで頂けたでしょうか? それも含めて、また、皆さんの「その後」を聴いてみたいと思います。
なぜなら、たとえ試行錯誤でも、何かしらの「行動」に現れてこそ、「学び」の場になったといえますから。
私はとても楽しく、私自身も、新たな気づきを言語化できました。「Σ塾」の皆さん、素敵な「学び」の時間を、ありがとうございました!!