前回に引き続き、在宅療養支援診療所と訪問看護ステーションを訪問し、看護師の方々にインタビューさせて頂いた学びからの総括です。
人財育成のためには、伸ばすべきスキルが明確になっている必要があります。訪問看護や訪問診療での看護は、病院での看護と比較してまだ始まったばかりであり、必要なスキルが洗い出されていないとのことでした。また、同じ看護ではあっても、訪問看護は機材や人手が十分にある病院での看護とは大きく異なり、同じ方法論を用いることはできません。そのため、人財育成と評価は手探りの状態であり、OJTやシャドウイングが中心となっているのだそうです。総論的、系統的にスキルを習得していくのではなく、体験した事例から一つずつスキルを習得することや、経験豊富な看護師が経験したケースをもとに学ぶというのが現状です。
しかし、スキルセットが明らかになっていないのは在宅看護に限った話ではありません。病院で働く看護師であっても、必ずしも体系的なスキルセットに基づいて適切な人財育成が行われているとはいえないのです。たしかに病院での看護は、在宅看護と比較すれば歴史も長く就業人数も多いため、経験値が蓄積され、必要とされるスキルの多くが認知されてきているものの、言語化され「見える化」された状態になっているわけではありません。
前回のコラムでは、患者さんと医療者が医療についての期待値を擦り合わせる必要性について書きました。その中で、擦り合わせが実現できていない要因の一つとして、看護師自身が提供するケアの範囲を決めきれていないと記しました。ケアの範囲を定めること(業務を記述し、可視化すること)は看護師が備えるべきスキルセットを明らかにすることと深く関係していると思います。これは私が今回のインターンシップで訪問した他業界の多くで、既にになされていたり取組み中である企業が殆どであり、看護の現場が最も学ぶことの一つであると思いました。
看護師の人財育成のためには、看護師が提供するケアの範囲を規定し、それに必要なスキルセットを明らかにしていく必要があります。またスキルセットを「見える化」することは人財育成のためだけではなく、看護師のスキルを正確に「評価」するためにも必要です。訪問看護や訪問診療だけでなく看護師の業務と必要なスキルについて整理していく必要があると思いました。
【今回の気づきポイント】
・ 看護師の人財育成、人財評価のために業務の整理やとスキルセットの「見える化」が喫緊の課題であり、他業界から最も学ぶことのひとつである。