少し前になってしまうのですが、「車椅子バスケットボール選手権」のボランティアに参加しました。
私には、2020年のオリンピック・パラリンピックを機に、どうしても実現したいことがあります。その夢の話は追々するとして、この日は、念願の「車椅子バスケットボール」のボランティアとして参加すること、そして、思いもよらず競技を(ほんのサワリですが)体験することができました。
「人生で一番多くの車椅子を見た。」それが最初の感想です。その日一日、たくさんの車椅子に囲まれました。囲まれていると、それが普通のことに感じられました。
次の感想は、「とにかく、面白い。そして、めちゃくちゃカッコイイ。」純粋にスポーツ観戦として面白い。技と力のぶつかり合う肉弾戦。日本一を決める大会ともなると当然レベルも高い。ボランティアの特典で(観客席でなく)アリーナで観られたのは、この上なくラッキーでした。目の前で繰り広げられるゲーム・・ボールが飛び交うスピード感、車椅子が走る、廻る、時にぶつかり合う迫力(一方でそれを起こすときの両チームの選手の振舞い)に、目が釘づけになり、久々に興奮しました。
何より、選手たちが、とてもカッコイイ。強豪といわれるチームには、ラグビー選手のような筋肉隆々の巨漢の選手が必ずいて(これも、この競技ならではの、適材適所があるのでしょう)そういう選手の中には、アメリカの国内大会でもMVPをとるようなプロの選手がいることも知りました。
この日、会場内では、選手たちが女の子に頼まれて記念写真に納まるような光景も見られましたが、(もっと知名度が上がれば)選手たちに若い女性ファンがたくさんついてもおかしくないと思いました。それほど、カッコイイ。(勝手な私見ですが)そういうスポーツになって然るべきだと。何より、たくさんの人に観てほしい、知ってほしい、心からそう思いました。
ほとんど予備知識もなく参加した私も、その場で、自分のお気に入りの選手を見つけ、声援を送りました。それほど、観る人を惹きつける選手たちであり、ゲームであり、競技だという認識を新たにしました。
さて、もう少し冷静になって、終日ボランティアに参加して気づいたことをまとめてみます。
・観客が少ない。現在は日本一を決めるこの大会でさえ入場無料だが、観戦者が少ない。この競技、大会、そしてその面白さや魅力が、殆ど知られていないのだと思われる。もっとマーケティングすれば人気スポーツになれるポテンシャルが高い。
・一般向け体験講座、ボランティアと選手の交流会があったが、これがとても価値がある。驚いたことに、30分で曲がりなりにも試合ができるようになり、それが何とも楽しい。この体験をすることでファンを増やすことはできる。
・ボランティアのシステム、運営システムは、さほど洗練されておらず、運用の改善の余地は大いにある。一方で選手との交流会など、協会の努力とノウハウで素晴らしい機会が提供されている。
・私がやったのは会場係、トイレのごみ収集。健常者が土足を上履きに着替えることは、車椅子利用者に読み替えると、タイヤを雑巾で拭くことだと知る。(その雑巾を洗うことと、バケツの水を変えるのが役割)そういう生活習慣を知る事さえ、今まで機会がなかったことを思い知る。トイレについては、(以前紙おむつのことを聴いたことがあるが)かなりのごみの量がでており、施設側と協会側の(収集の)責任分界点が設定されている。大会を支える努力は計り知れない。
私も選手との交流会に参加し、思いがけず実際に試合をすることができました。何よりも驚いたのは、車椅子の操作が想像以上にハードルが高くなく、その場で操れるようになったことです。もちろん、簡単とは言いませんが、考え様によっては、普通のバスケットボールよりも(脚力や足の速さなどに関係なく)、入りやすいという感覚を得ました。健常者、障害者、バスケの経験・未経験に拘わらず、誰もがある意味で同じスタートラインに立って楽しめるスポーツではないかと思いました。(もちろん、上半身だけを使ってのシュートなど、経験者ならではの技は当然あります。)
誘われるままに交流会に参加し、一通りの車椅子の使い方やルールを教えてもらい、ものの30分もたたないうちに試合ができたことは、新鮮な驚きでした。そして、もっと驚いたのは、実際に試合をしてみて、健常者と障害者の区別をあまりしていない(実際に殆どが初対面なのでどの人がどうとか区別がつかない)自分に気づいたのです。それこそが、やりたかったこと・・普通に混じり合い、一緒になってボールを追いかける、パスを出す、ゴールを目指す。それこそがやりたかったこと。その日のうちに、そんな発見ができ、その感覚が体感できたことは、何よりの収穫でした。
ストリートバスケットのように、場所と機械(これが難関ですが)があれば、一緒になってすぐに楽しめるスポーツ・・・そんな場が作れないだろうか・・・などと、勝手な妄想を抱いてしまいました。妄想ついでに言うと、健常者も障害者も混合で出られる公式試合があってもいいのにと、この楽しさを、興奮を、感激を、同じチームで共に味わうことができたら、なにか人間としての私達の感覚の中に、新しいものが生まれてきそうな、そんな妄想が湧いてきました。
それが、ダイバーシティということなのか、どうなのか、まだ私にはわかりません。
ですが、なにか実現したい社会に一歩近づく、そんな思いを強くした、本当に素晴らしい体験でした。
「車椅子バスケットボール」という競技を、一ファンとして、これからも見続け、応援し続けていきたいと思います。