2022/03/18

東京都主催「TEAM BEYOND企業・団体交流会」特別講演

パラスポーツ、車いすバスケットボール

去る3月3日雛祭りの日、東京都主催「TEAM BEYOND企業・団体交流会」で講演をさせて頂いた。時節柄、私はスタジオに赴いたが、参加者の方々はオンライン上での参加である。

「TEAM BEYOND」とは、パラスポーツの応援の輪を個人や企業・団体問わず広げていくために東京都が主催されるプロジェクトである。当該ホームページには、「パラスポーツを通じて、みんなが個性を発揮できる未来を目指すTOKYO発のチームです。アスリートだけでなく、スポーツをする人、観る人、支える人、さらには、企業・団体など、あらゆるジャンルを超えて、メンバが集まり、一つのチームとなって活動を展開していきます。」とある。

東京2020パラリンピック競技大会で盛り上がったパラスポーツの機運を、一過性のものにすることなくより盛り上げ、私たちの社会や組織を持続可能なものにする「レガシー」として残していくための活動と理解をさせて頂き、早速、私もメンバ登録をしてみた。

当日のお題は『企業・団体のサステナビリティのためにパラスポーツが貢献できること』という直球かつハードルの高いテーマ。なぜかというと「2020東京パラリンピック競技大会に向けてスポンサードして下さった多くの企業に引き続き応援して頂くために、大会以降も我々パラスポーツが何を還元でき、どんな貢献ができるのか」の答えを示さなければならないからである。

実は、この一年、我々「日本車いすバスケットボール連盟(以下、JWBF)」では、そのことにずっと向き合い「中長期計画」(企業で言うと「中期経営計画」にあたるものである)を策定する必要性を強く感じ、それを「未来プロジェクト」という形で進めてきた。だからこそ、我々パラスポーツ(団体)が、社会の中でどんな存在であるべきなのか、ありたいのか、その貢献の形を、明確にして発信しなければならない時期に来ている。

とはいえ、その(継続して応援して頂く=企業へのメリットを提供していく)難しさ(というか、それを言語化してお伝えする)難しさも感じてきただけに、どうお伝えするのが良いのか・・・準備は思いのほか捗らずにいた。

<講演資料より 私の問題意識>

 

最近「ダイバーシティ&インクルージョン」や「サステナビリティやSDGs」さらには、「スポーツ」「パラスポーツ」とそれらを結び付けるお題で講演のご依頼を頂くことも増え、お伝えしたいことや素材はある程度手元に用意できていたが、話のシナリオとして組み立てるのに悩み、なかなか「降りて」来ない。

一方で、私自身は他のパラスポーツを詳しく知るわけではないので「車いすバスケ」を通してお伝えするしかない。

<講演資料より 車いすバスケットボールの特徴>

 

JWBFの各クラブや個人の選手を含めて長年蓄積してきた「体験会」というコンテンツ一つにしても、社会的な意義はとても大きい。自分自身もボランティアや「体験会」がパラスポーツの最初の接点であったこと、短い期間ではあるが「車いすバスケ」に関わり、それらを見聞きして感じたこと、知ったこと、特に「地域」での活動をぜひ皆さんに知って頂き、「貢献」のイメージに繋げて頂けるのではないかと確信している。そこで、「未来プロジェクト」の仲間に素材の提供もお願いし、紹介をさせて頂くことにした。答えは私が出すのではなく、聞いて頂く方に出して頂こうと腹を決めた。

講演の最後に、紹介させて頂いたのは、私も見学させて頂いた「千葉ホークス」の車いすバスケットボール体験会である。こちらは、見学時に撮影させて頂いた写真の掲載を、代表で「未来プロジェクト」のメンバでもある「田中恒一」さんにご了解頂き、実際に体験会で観たこと感じたことを、私の口から伝えさせて頂くことにした。

<千葉ホークス主催車いすバスケットボール体験会>

もう一つは、同じく「未来プロジェクト」の仲間で高知県で活動されている「片岡優世」さんの「Uプロジェクト」である。片岡さんは、長らく子供たち向けデイサービスやスポーツ教室など、障害健常問わずスポーツや文化活動を通して子供たちどおしが触れ合う活動を地域に根を張ってされている。その一環で学校授業でも車いすバスケの体験会を取り入れた教育活動を展開されており、その時の写真や授業を受けた子供たちの感想文も多数送ってくださった。それを全部読ませて頂き、質問やディスカッションにも対応頂き、掲載を了承いただいた。片岡さんの、感想文を書いてくれた一人ひとりの子供たちと授業が終わってからも対話をしたり心配な子には会いに行ったりと向き合う姿勢も教えて頂き、多様性を「自分ゴト化する」とはそういった「個」に向き合うことであり、そこに意味や意義もあるということを実感をもって伝えたいと思った。

 

そうして、準備をする中で、ぎりぎり直前になって、講演で伝えるべきメッセージが固まった(降りてきた)。

聴講されている皆さんは、既にパラスポーツ活動を何等かの形で行われている、サステナビリティやD&Iのリテラシーの高い方々とお聞きしていたので、私からお伝えしたのは、

1.組織のサステナビリティ活動を、外圧でなく「内発的動機」にすること

2.「属性」ではなく「個」に着目したダイバーシティ&インクルージョンの啓蒙と取り組み

3.「多様性を活かす組織マネジメント」のできるリーダー育成

これらに、「パラスポーツを使ってください」というメッセージである。

とはいえ、30分にそれらを納めなければならなかったので、最終的には用意したトピックをかなりそぎ落としてお話をさせて頂くことにした。

おかげさまで、頂いた難度の高いお題に対して、真摯に向き合い、うんうん悩みながら熟考することができたとても良い機会となった。また講演後のTEAM BEYONDのメンバ企業・団体の皆様とのワークショップでは、ご意見やご質問なども多数いただき、リアルな声や新たなインスピレーションを頂くことができたのも、本当にありがたい機会となった。どの企業も「自分たちはどんなところで役に立てるだろうか」と考えて下さると共に、ボッチャやゴールボールや車いす競技や・・・様々なパラスポーツを取り入れて、組織の一体感醸成や、ダイバーシティ&インクルージョン啓蒙などのサステナビリティ活動に取り組んでおられることもリアリティをもって理解できた。先進的な企業様からは「サイバーボッチャ」という初めて耳にする競技のことも教えて頂いた。

最後に、東京都の皆様とも短い時間ではあったが意見交換をさせて頂き、改めて2020東京パラリンピック競技大会での裏のご苦労などをお聞きすることもできた。局長さんは、車いすバスケ日本女子代表の試合を観てくださり空っぽの観覧席を観ながら「子供たちにみてもらいたかった」と号泣されたと言うエピソードを、その口惜しさをにじませながらお話をしてくださった。

改めて、あの日に至るまでの長かった道のりと多くの人々が我々の想像を超えるご尽力を頂き、あの舞台を作ってくださったことへの感謝と、次は「子供たちにみてもらいたい」そして、我々パラスポーツ(団体)が、まだまだ未成熟ではあるが、共生社会を作る一端を担い、子供たちの輝く未来をつくること、そして企業の皆さんにとって「ESG経営のパートナー」といっていただける存在になるということが、目指すべき姿でもあることを改めて認識した一日であった。

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