2019/08/29

株式会社「滋賀銀行」の社外取締役に就任させて頂きました。

滋賀銀行

きっかけは、2年前2017年11月にご縁があって登壇させていただいた講演会だと記憶している。滋賀銀行では伝統ある「比叡会」。大学の後輩からの打診で、この講演をお受けした経緯は、以前コラムにアップさせていただいたが、その時の正直な感想は「100人以上の銀行員の方々が一同に会するとこんなに張り詰めた空気になるのだなあ」。実は、私自身の方が緊張していたからかもしれない。それとは裏腹に「頭取の存在感が醸し出すピリリとした緊張感と、リラックスされたときのフランクさと滲み出る深い人間味」(失礼ながら)が深く印象に残った。

その日は、後輩の「頭取は改革派ですから」という、お墨付きを素直に信じ、「組織文化と組織改革」について、思えば、自分の思うこと、信じるところを自由に話させていただいた。

それがよかったのか刺激が強すぎたのかは、今でもわからない。ただ、完全アウエィの環境で緊張感を感じながらも皆さんの喰いつきというのか前のめりで聴いてくださった受容のようなものを感じていた。そして、講演終了後の二次会の最後まで一参加者として皆さんに混ざり、講演に対する感想や支店長さんやママさん行員の方々の普段着の話を聞かせて頂いたこと、そして頭取をはじめとする幹部と管理職の方々、若手行員の皆さんのやり取りをみていたこと、さらには、帰り道に、頭取と約1時間の車の中での会話の印象が、後々、私の背中を押すことになる。

超低金利時代というこの環境の中で、どうやって地域で存在意義を出していくか(今どきのよそ行きの言葉でいうと)「企業価値」を上げていくか、その中で働きがいややりがい、自分たちも成長する喜びや楽しさ、生き生きした文化を組織の中で育てていくか、様々な課題に向き合いながらも、それぞれの立場でそれらに真摯に取り組んでおられる姿が、私の勝手な想像も含めて、深く胸に刻まれた。

どちらかというと、「銀行」や「銀行員」の先入観を含む印象は、良い意味で大きく覆った。

P1110913  全景

それから、約1年、昨2018年秋のはじめ、思いがけず、頭取からの東京での面談の要請。目的も話題も全く想像がつかないまま、その場に向かった。冷静に振り返ると、Bリーグの理事になる前に行なった大河チェマアンとの面談に通じるものがあった。

目の前にいる人(組織のトップ)が、抱える課題や夢、将来の展望に対して、共感できるか、一緒に夢が見られるか、心底役に立ちたいと思えるか、利己を超えて良かれと思うことを(苦言も含めて)言えるか、そして最後は自分ゴトにできるか、つまりは、same boat(同じ船)に乗れるか、それは自分にとってわくわくすることか・・・そんなことが自分への問いだったように思える。

もちろん、一方で、自分なりの戦略があるのか、こんな新参者が本当に貢献できるのか、という疑問や怖さのようなものは、あとになるほど沸いてきたし、それを言い始めると、私は銀行業務の初歩の初歩も知らない。それは、Bリーグというスポーツ業界に初めて踏み入れた時と同じである。大河チェアマンはこの新参者に対し、様々な背景を飲み込んで「しがらみがない方がいいんですよ」とおっしゃってくださり、頭取は「銀行業務のことは勉強してくれればいいんですよ。人をどう育て、組織を筋肉質にしていくか、環境が大きく変わる中でそこをお願いしたいんです。」

思えば、こんな外様で新参者の私を登用しようなんて、お二人とも、無謀と言えば無謀、寛容と言えば寛容。あとは、自分が、相手を信じ、自分が(守るものがないと思えるくらい)相手や相手の世界に対して尽くせるか、その覚悟ができるか・・・そう思えてから、(ここが私の性格だが)「怖れ」のようなものが、すっと、消えていった。

以前、このコラムにも書いたが、私のメンターでもある「ダンクソフト星野社長」に言われた「役割は、然るべきときに然るべく降りてくる。」という言葉が、再び背中を押した。

2011年から他県の地域創生をみてきて、ここ数年やっと故郷の滋賀で地域を盛り立てる人々にも出会えて、私は何ができるのかと考えていたが、私なりの立ち位置で、もっと「滋賀」に貢献しなさいと与えられた「役割」でもあるのだと、素直に思うことができた。

半年間の気持ちの整理と準備期間、(まだまだ始まったばかりだが)勉強期間を経て、2019年6月26日の株主総会をもって、独立社外取締役に就任させて頂くこととなった。

 

上場企業ということもあり、手続きから様々なやり取り、そして緊張で迎えた株主総会、まだ3回しか経験がないが銀行の取締役会。上場企業とはいえ、20年のメーカーしか経験のない私からすると、毎回が、目から鱗だ。

行内での「共通言語」も目新しく、財務諸表の読み方も違えば、「トップラインを伸ばす」、「競合に対して差別化をする」、「利益を最大化する」・・・、そのあたりの根本的なビジネスの考え方が異なることに、今も戸惑うが、それさえ新しいことを学ぶのが、楽しい。

ありがたいほどの厚いサポート体制を頂きながら、一方で、最初から貢献が求められるので、様々な議題の根底にある「組織と人財育成」を軸に、自分がどこで貢献すべきかを考え、それをすぐさまアウトプットの形にして応えていかねばならない。

そのための準備にもまだまだ膨大な時間を要する。

昨今、「ガバナンス」が急速に問題視され、「コーポレートガバナンス・コード」の浸透が進む今日、社外取締役のニーズは高まり、かつ、その責任は非常に重くなっている。ここ数年、非上場や公益、上場も含めて社外取締役(公益のBリーグは外部理事)を経験、勉強してきた実感として、社外役員の心構えとして、ある方に教わった言葉が、今はとても腹に落ちているので、ご紹介しておきたい。

  1. その会社のことを、「我が社」と言えるか。
  2. 「辞表」をいつでも胸ポケットに潜ませて取締役会に臨んでいるといえるか。
  1. は、言わずもがなであるが、もはや社外取締役は、お客様意識で負えるような責任ではないし、それでは何ら貢献はできない。
  2. は、要は、社内では言えないこと、忖度してしまいがちなことを、当行やステークホルダーにとって本当に良かれと思うことを、保身や経済的な依存から解き放たれて、直言できること。(よって、経済的自立が必要である。)これからまだまだ学びや気づきがあるかもしれないが、今は、この2つが自分への問いであり、常にチェック機構として必要な視点だと、心に刻んでいる。今週も、多くの議題の資料を読み込み、「当行」にとって、当行を取り巻く「ステークホルダー」にとって最善はいったい何なのだろうか? そんなことを集中して思考を巡らせるには、マザーレイク、この美しい琵琶湖のほとりのホテルの一室は、とても恵まれた環境だ。

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