私たちが活動している、立命館大学校友会。
立命館大学の卒業生は、全国に35万人いるといわれており、京都に本部を置く立命館大学校友会とともに、各都道府県(県によっては複数存在)や海外(2018年1月現在で29校友会)にもそれぞれ校友会が組織化されています。今日、大学にとって、その卒業生組織のネットワークを活かすことは、物心両面の支援を得て、大学のプレゼンスを上げていくためにも、重要な課題となっています。
このコラムでも、何度か取り上げてきましたが、私は、京都の朱雀に本部を置く立命館大学校友会の「常任幹事」と、東京に拠点を置く立命館大学東京校友会の「会長」を仰せつかっています。時々誤解されるので、お伝えしておきますが、校友会を支えるOB・OGの活動は、すべて無償のボランティアによって支えられ、各組織の独立採算によって成り立っています。
校友会の使命は(会則にもありますが)、①母校支援、②会員相互の交流、そして③社会貢献、この3つが柱になっています。そのなかでも、「母校支援」は、重要かつ喫緊の課題です。今でこそ、京都(衣笠キャンパス、朱雀キャンパス)以外に、滋賀(びわこ草津キャンパス)、大阪(大阪いばらきキャンパス)と3府県をまたがる大学であり、大分県別府市に、兄弟分であるアジア太平洋大学(APU)がありますが、いずれにしても、京都の大学というイメージの強い立命館にとって、東京は思い切りアウェイの土地柄。今でこそ、全国比率も上がり、新卒で就職する学生も多く関東に来るようになりましたが、東京にいると、先輩に出会うことも少なく、ましてや、(私のように長く学生さんのキャリア支援や校友会の役員をやっていないと)どんどん、母校や京都からの物理的心理的距離が離れていってしまいます。そんななかで、卒業して何年も経って、「母校や後輩を支援しろ」と言われても・・というのが、皆さんの実感であることは、わかっていました。(ただ、あとで分かったのは、これは東京に限らず、どの県も五十歩百歩、同様の反応だったようです。)
そんななかでも、大学の戦略もあり、校友会でも本格的に母校支援の基金が立ち上がり、「未来人財育成基金」として、各県に施策が下りてくることになりました。最初の1,2年は、目的や使途、プロセスが不明確だったり、焦点が定まらず、目標金額はあるものの、遅々として進捗はしていませんでした。当然ながら、推進する各県も、「集金係」だけ命じられてもという、批判や不満も続出していました。私たち東京も、最初の一年はどうしたものやら・・先述のように、いきなり「母校支援」の名のもとに、先輩方にお願いに出向いても、いきなり財布を開けて頂ける方は、ごく限られていますし、お願いする説得材料もないままに、しばし、途方に暮れたというのが正直なところでした。
悶々とする日々が続いたのち、何をきっかけにか、「もう、四の五の言うのはやめて、戦略を考えよう」と思うようになりました。その背景には、私自身は、校友会やキャリア形成の授業などで、大学や学生さんとの接点がふだんからあったため、「今の立命館のプレゼンスは、先輩方の功績のみならず、今の学生が頑張っているから」だということが、よくわかっているからでした。
今の学園や学生さんに投資をすることが、学生さんの能力の発揮、大学での学びの質の向上、研究のレベルアップにつながり、ひいては、立命館のプレゼンスを上げるのだと。そのことを、理解してもらいつつ、(それでも、お財布のひもは固いと思われたので、)東京校友会の役員のメンバと、プロジェクトを立ち上げ、議論を始めました。(校友会のようなボランティア組織で、何か事をなし結果をだすには、プロジェクト化をしないとコミットもしてもらえないし、完遂できないということはこれまでの経験で認識していました。)
そのプロジェクトの皆さんとの議論で行きついたのが、「自分たちも未来人財」というコンセプトです。学生さんや今の学園の状況を知ってもらうことだけでなく、「未来人財育成基金」に寄付をしてくださった方にも、何かしら還元できるものを・・・それは、やはり私たち自身が「学べる機会」ではないかと。そういう皆さんの学ぶ意欲や成長意欲にこたえることができれば、双方にWinWinになり、協力者としてネットワーキングでき、より意義を感じて頂けるのではないかと考えました。そうして立ち上がったのが、東京校友会「未来塾」です。
最初のころに行なった「未来塾」:すべて校友による講演や見学会です。
よく周りを見回すと、いつも一緒に活動をしている校友会役員メンバには、「外資系企業の販売会社社長まで務めた営業とマーケティングのプロ」「日系生保のトップ営業からベンチャーで保険事業を立ち上げたプロ」そして曲がりなりにも「人事・組織」を生業とする私も含め、コンテンツを提供できる人財が豊富にいるではないか・・。もっと周りを見回せば、(当時)エアラインA社の危機管理のトップでいらした副社長や、M&Aの第一人者や、株式投資の第一人者など。。政財界のトップ人財の先輩がいらっしゃる。皆さんの力を借りて、私たちに学びの機会を提供頂こう! それが、この「未来塾」のきっかけとなりました。そこから先は、新しいアイデアがどんどん出てくるようになり、副会長の井辻秀剛さん、副幹事長の茨木紀夫さんが中心になって、シリーズ化をしてくださることになりました。題して、「秋の特別セミナー『現場最前線のプロに聞く!贅沢なセミナー 』」「人事・組織編」と、「営業・マーケティング編」です。
言い出しっぺの私も最初のまな板に乗ることになり、今期最初の「未来塾」(通算5回目)で、「組織文化と人財育成」と題し、本業のプロジェクトの事例を織り交ぜたレクチャと、皆さんに組織文化について考えていただくようなセッションを担当させていただきました。
同日には、副幹事長で「保険共済サービス株式会社」を起業されたばかりの「保険」のプロ中のプロ「茨木紀夫」さんから「ライフサイクルと本当の保険とは」と題して保険の「極意」を、茨木さんのネットワークで、株式会社社会人材研究所代表取締役所長「白石久喜」さんには、人事・組織の話題のなかから「キャリアデザインから働き方改革へ」というテーマで、非常にユニークでわかり易いキャリアデザインのお話をして頂きました。
当日は、学ぶ意欲と意識の高い、特に若い校友たちが集まり、15人限定という少人数方式のゼミのような(ちょっと懐かしい)雰囲気で、レクチャとディスカッションを行いました。私自身も、本業でのプロジェクトの事例をいくつかベンチマークする形で整理し、それらをもとに私見や経験値をお伝えするとともに、皆さんに「組織」という、ある意味で形と正解のないものを一緒に考えて頂き、とても刺激となりました。
一か月後には、もう一人の「未来塾」の立役者でもあり副会長の「井辻秀剛」さんとそのネットワークで、どっぷりと「営業とマーケティング」を学んでいただくという、文字通り「贅沢」な「未来塾」を開催しました。
私は、出張のために途中退席しましたが、なんとも刺激的な「ここだけの話」的なリアルなセッションで、わくわくする内容でした。
最初は、八方塞りの状態からスタートした「未来人財育成基金」による母校支援ですが、「自分たちも未来人財」という明確なコンセプトと戦略を言語化したことで、「未来塾」が生まれ、そこからはアイデアや企画が噴き出すように溢れ、新しい「学び」のコミュニティを作りつつあります。何より、今は主催者が一番楽しんでいるかもしれす、校友会には「戦略」と「遂行力」そして、何より「自分たちが楽しむこと」が不可欠だという確信は、変わらず私の中にあります。
これからも、皆さんと楽しみつつ、母校支援と自分たちの成長の両方を、欲張って実践していきたいと思っています。