2016/08/23

立命館大学法学部で「キャリア形成教育『社会に生きる法』」に登壇しました。

学生向け「キャリア形成教育」

去る7月1日、立命館大学法学部で「キャリア形成教育『社会に生きる法』」に、登壇しました。
この講座は、2007年に当時の副学部長のK先生が企画されるのをお手伝いしたご縁もあり、講師を担当してから、ちょうど今年で早10年になります。もともとこの講座が開設されたのは、K先生が「法学部の学生は、学部に入学した動機と卒業後のキャリアとの乖離があることが多く、途中で法学部で学ぶモチベーションが下がってしまう」という危機感を持たれたことが、その発端でした。

そこで、「法学部で学ぶことの意義や楽しさ。どんな仕事をしても、法学部で学ぶことは社会で役に立つことを伝えていきたい」という先生の強い思いから、講座の企画がスタートしました。正確に言うと、最初に前職のオフィスを訪ねてきて下さったK先生は「竹内さん、僕のこの仮説は合っていますか? 法学部で学んだことが、本当に社会で生きていると思いますか? 僕は、実のところ大学しか知らないので、そう言い切れるか教えてほしいのです。」もともと腰の低いK先生は、そのように、とても丁寧にご自身の問題意識について説明をしてくださいました。
思えば、K先生の言葉には、法学部の学びに対する先生なりの信念、(それが専門ではなかったK先生ですが)「キャリア形成教育」への深い思慮、そして、何より学生たちへの愛情に満ちた先生の思いが迸っていました。その圧倒的な熱意と一種の迫力に、私が心を打たれてしまったのがきっかけとなりました。

一呼吸おいて、少し言葉を探しながら、でも迷うことなく「先生のおっしゃる通りと思います。」

「竹内さんの場合はどんなふうに役立ったんですか?」「私の場合で申し上げると・・・」と、私自身のキャリアを一つ一つ辿りつつ、食い入るように一点を見つめる先生からの率直な質問を受けながら、図らずも自分のキャリアと学びを振り返り、先生と議論をしたことを今も鮮明に覚えています。

それから、私なりに、多少でもお役に立てるだろうかと、法学部の先輩や後輩にヒアリングをしたり、講師をお願いできる企業人を探したりして、先生の構想の実現にほんの少しばかり協力をさせていただきました。そして、先生の思いがそのまま『社会に生きる法』という講座名となり、私以外にも、多くの企業や行政の場で働く方々、法律を専門とする方にもそうでない方にも登壇をしていただき、リレーで講義をするという形ができあがりました。

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個人的には、他大学でも、何度か「キャリア形成教育」を担当することがありましたが、いわゆるテクニカルな(極端にいうと、就職専門学校的な)ことを求められることも多々あるなか、学びとキャリアを深く考える場として、この10年、教授や講師の先生方に、地に足の着いた授業に育てて頂いたように思います。一方で、法学部でありながら、法律を専門職としない人たちを中心に巻き込んだ「キャリア形成教育」という意味でも、異彩を放っているといえるかもしれません。しかしながら現代の高等教育からの多様な人財排出の有り様を反映したひとつの「キャリア形成教育」の形として、毎年200名強の受講者を輩出し、一定の効果を上げ、法学部に根付いてきたように思います。

2年目から巻き込んだ後輩の(グローバル企業の法務部という最前線でキャリアを磨く)K君や同級生の経営者であるS君も、9年間この授業の講師を務めてくれています。私自身は、最も「法律を専門としない側の職種」で働き、かつ「キャリア」の専門家の端くれとして、学生がしっかりとした「職業観」をもってキャリアのスタートが切れることを主眼とした授業を行っています。

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もちろん、この10年の間には、社会を取り巻く環境や、政治・経済、そして働く環境や、企業や人々の価値観も大きく変わりました。授業で扱うケーススタディも、毎年大きく変えないとキャッチアップできません。一方で、法学部の人たちが真に学ぶべき、真理や原理原則は、変わることがありません。その真理や原理原則がどんなキャリアでもとても大切であること、その上に自らの価値判断基準を形成することが大事であること、法学部で学んだからこそ持つべき倫理観や社会的責任・・・それらを、しっかりと学ぶことで、法学部卒業生として差別化できることを伝え、学生さんには、自信をもって学び、社会に出てほしいと考えています。

私自身、10年も続けてくると、自分自身の視点や視野、価値観が変わった部分も、正直あります。変わらない真理と、フレキシブルに変われる思考柔軟性、多様性を受容することの大切さも、伝えていきたいと思っています。

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そんなことを思いながら、今年も新しいケースを用意し、より自分のキャリアというものを「引き寄せて」考えられるような授業をしてみたいと試みました。さて、学生さんは、どんな風に感じたでしょうか。

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